秋の長雨と台風で紅葉の撮影に行けず、うずうずしている今日この頃です。
そこで、ずっと温めていた記事のネタである、デジタル一眼レフのキャノンのニコンの違いなどについてを記事にしてみます。
ミラーレス一眼からステップアップして、デジタル一眼レフを初めてみたいと思う方は、きっとキャノンとニコンどちらにするか悩むことから始めると思います。
キャノンの5Dmark3から始めて4年、ニコンのD810を使い始めてからは、キャノンとニコンのダブルマウントを2年間継続しています。
両方のマウントの経験があるからこそ分かるそれぞれの長所と短所を列記してみたいと思います。
ニコンの長所
1:イメージセンサー:ニコン(外注)>キャノン
画像を写しとるカメラボディの心臓部のイメージセンサーは、ニコンに軍配があがると思います。
キャノンのイメージセンサーは、キャノン内製のセンサーを採用しています。
一方でニコンはセンサーの製造先を外注に委託生産させています。おもな委託先はソニーであると噂されています。
ソニーはαシリーズで有名なように、裏面照射型センサーを一眼レフのセンサーにも採用することで高画素化と高感度化を両立しています。
このセンサーの技術において、キャノンはソニーなどに大きく差をあけられているのが現状です。
このイメージセンサーの能力を客観的に試験・評価し数値で表しているサイトがDxOmarkです。(https://www.dxomark.com/)
主要一眼レフと一部ミラーレス一眼をDxOmarkのスコアを表にまとめてみるとこのようになります。(※画素数のみ自己調べ)
D850 | D810 | D750 | D5 | 5DsR | 5D4 | 6D2 | 1DX2 | α7R2 | α9 | D500 | 7D2 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Overall Score センサ総合点 |
100 | 97 | 93 | 88 | 86 | 91 | 85 | 88 | 98 | 92 | 77 | 70 |
Color Depth 色再現域と分離 |
26.4 | 25.7 | 24.8 | 25.1 | 24.6 | 24.8 | 24.4 | 24.1 | 26.0 | 24.9 | 24.0 | 22.4 |
Dynamic Range ダイナミックレンジ |
14.8 | 14.8 | 14.5 | 12.3 | 12.4 | 13.6 | 11.9 | 13.5 | 13.9 | 13.3 | 14 | 11.8 |
Low-Light ISO 許容できるISO |
2660 | 2853 | 2956 | 2434 | 2308 | 2995 | 2862 | 3207 | 3434 | 3517 | 1324 | 1082 |
Pixel count 10Kpix 万画素 |
4575 | 3635 | 2432 | 2082 | 5060 | 3040 | 2620 | 2020 | 4240 | 2420 | 2088 | 2020 |
この表をさらに折れ線グラフにして可視化してみました。
グラフの左から、ニコン→キャノン→ソニーです。 (※フルサイズ以外はレンジが異なるので略)
このグラフから分かることは
・ニコン、ソニーはスコアが高く、中央付近のキャノンのカメラが総じてスコアが低い。
・5Dmk4などは、3つの点が固まっていることからバランス機である。対して5DsRは画素数だけが突出しピーキな仕様。
このように客観的な指標でもニコンのほうがセンサーについては優勢なようです。
特筆しますと、17年9月に発売されたニコンのD850は、最後のレフ機になると言われるほど、高画素、連写、画質がバランスが取れています。
実際にD850でISO2000で撮影した涸沢カールの夜景で一例を紹介します。
この画像の中央部を等倍に拡大した画像がこちら。
テントの文字のMont-bellの文字が読めるまで、高画素と高感度が両立されています。
2:レンズ:キャノン>ニコン
レンズにおいては、キャノンに軍配が上がると思います。
ニコンは不変のFマウントとしてメカ絞りなどを継承してきました、これはこれでオールドユーザーにはメリットです。
一方でキャノンはデジタル化の時代を見越して、電磁絞りのEFマウントに早々と切り替えていきました。
その為か総じてキャノンのレンズの方が、ニコンの1世代前を走っているように感じます。
レンズにおいてもDXO markでスコアが出ているので、キャノンとニコンの大三元レンズを比較してみます。
※指標ですが、上から総合スコア、シャープネス、透過率、歪み、口径食、色収差です。
全体的にキャノンのレンズのほうが数値が上です。実際に使ってみた感じでもキャノンのレンズのほうが優れていると感じます。
とは言え、一眼レフのレンズには、広角レンズから望遠、チルトシフトレンズまで様々なレンズがあり、スコアだけでは表現できない部分もあります。
以下に各種レンズ毎に、個人的に優れていると感じたレンズを紹介します。
・広角レンズ:AF-S Nikkor 14-24mm F/2.8G ED
ニコンの広角域の大三元レンズです。14mm始まりであるため、風景から星の撮影まで幅広く使うことができます。
キャノンの広角レンズは16mm始まりで、この2mmの差が大きい為、アダプターを介してマニュアルフォーカスでもこのレンズをつかうキヤノンユーザーもいるようです。
・標準レンズ:EF24-70mm f2.8L II USM
キャノンの標準域の大三元レンズです。手ぶれ補正はありませんが、風景写真を撮影する上では、さほどデメリットではありません。
その恩恵を受けて805gと軽く持ち運びも便利です。
対するニコンのAF-S Nikkor 24-70mm F/2.8E ED VRは手ぶれ補正がある為、1070gと非常に重く更には鏡筒が長い為、持ち運びが大変です。
雲台に固定してもおじぎしてしまうこともしばしばあります。
・中望遠レンズ:EF70-200mm F2.8L IS II USM
キャノンの望遠域の大三元レンズです。2010年発売のこのレンズですが、写り、AF速度などどれをとっても、まだ第一線のレンズに引けを取らないキャノンの神レンズです。
ニコンは2016年発売のAF-S 70-200mm F/2.8E FL ED VRでやっとキャノンのこのレンズに追いついたと言ってもいいでしょう。
・望遠レンズ:EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
2015年に16年ぶりにモデルチェンジしました。4段分の手ぶれ補正+先述のEF70-200㎜ F2.8L IS II USMに迫る画質ということで、鉄道・飛行機写真には定番の望遠ズームです。
・超望遠レンズ:AF-S Nikkor 200-500mm F/5.6E ED VR
高画質でありながら低コストを実現したニコンの超望遠域のズームレンズです。13万円程度でこの画質が手に入るのは、キャノンユーザーには信じ難いことだと思います。
・単焦点レンズ:EF300㎜ F2.8L IS II USM
誰もが憧れる通称:サンニッパです。サンニッパなのに2350gと、このクラスのレンズとしては軽いです。望遠域の単焦点レンズ欠点は、総じて大きい+重い為、持ち出す機会が少なく防湿庫の肥やしとなるのが定番の悩みの種です。
しかし、このキャノンのサンニッパの長時間の使用にも耐えうる軽さは、持ち運べる+バッグに入るサンニッパとしてとても実用的です。
ニコンのサンニッパ:AF-S Nikor 300mm F/2.8G ED VRII は2900gある為、約550g重いことになります。
・単焦点レンズ:AF-S 300㎜ F/4E PF ED VR
サンニッパは、ニコンのレンズは重かったですが、サンヨン(300mmF4)は、ニコンのレンズの方が755gと軽いです。しかもフレネルレンズを採用し非常にコンパクトなサイズに設計されています。
300mmの単焦点の世界がこのサイズで持ち運べるのはとても魅力的です。
・チルトシフトレンズ:TS-E24㎜ F3.5L II
チルトシフトレンズはキャノンのラインナップが潤沢です。広角から望遠まで揃っています。しかもチルトとシフトが独立して制御できるのもキャノンが先行しています。ニコンは2016年発売の19mmのチルトシフトレンズ:PC-E 19mm F/4E EDで初めて採用されました。
・ポートレートレンズ:EF135mm F2L USM
1996年に登場したレンズがまだ第一線でポートレートレンズとして活躍しています。望遠ならではの強力な圧縮効果とボケで被写体を浮かび上がらせることができます。お気に入りのレンズです。
・入門レンズ:EF50mm 1.8 STM
有名なキャノンの撒き餌レンズです。2015年にモデルチェンジされましたが、モデルチェンジ前には1万でおつりがくるレンズとして定番の入門単焦点レンズでした。このレンズからレンズ沼にはまった人は数知れず。
・サードパーティー製レンズ:キャノンのマウントが優先
ニコンよりキャノンのほうがユーザーが多い為、サードパーティー製のレンズは、キャノンを優先して販売されることが多いようです。
ソニー、ペンタックスなどはさらに優先度が落ちます。
・キャノンのレンズは光芒が整っている
レンズは絞りを絞ることで、光源を光芒のように表現することができます。この光芒はキャノンのほうが綺麗に(整っている)ように感じます。
ニコンでは、どこまで絞っても綺麗な光芒が得られませんでした。
どちらも円形絞りなのですが、なぜこのような違いがでるのかは分かっていません。
以上、レンズについて比較してみました。
DXO markでもキャノンのレンズがスコアが高く、また種類も多く充実しているように感じます。
またサードパーティー含めてもキャノンのほうが様々な面でメリットが多そうです。
3:ユーザビリティ/ユーザインターフェース:ニコン>キャノン
ユーザビリティ(使い勝手)などはニコンが一歩先を行っているように感じます。
ただ、ユーザビリティと一言にいっても様々な面があるので、私が両メーカ間で差異あったと感じた点を挙げてみます。
・ニコンにはフラッシュが内臓されている機種が多い
キヤノンの5Dや6Dにはフラッシュは内蔵されてませんが、D750,D810には内蔵されています。やはり「ある」といざという時に助かります。
・ニコンにはバリアブルモニターが多い
5Dmark4には搭載されませんでしたが、D850には搭載されました。池などへの反射ものを撮影する時に、ローアングルからの撮影時には非常に便利です。
・ニコンはクロップモードがある
クロップモードとして使う機会が多い訳ではありませんが、やはり「ある」というのは便利です。
・ニコンはISO64が使える
NDフィルターが欲しい時でも、ISO64+絞りを絞ることで代用できる場合が多いです。
・ニコンにはアイピースシャッターがついている
夜に星空を撮影する時などに外乱光がアイピースから入らないようになど、正確な露光が可能になります。
ニコンを使い始めるまでその存在を知りませんでした(笑)
・ニコンは交換式のマグニファイヤアイピースがある。
アイピースを交換してファインダーを拡大してみることができます。また丸型の大きな目にフィットするアイピースにも交換できます。
・ニコンのバッテリーグリップは、コンパクト。
このようにキャノンのバッテリーグリップは、L字形状をしており持ち運びが不便です。
しかしニコンはI型のため、狭いスペースに入れて持ち運び可能です。
・ニコンのレリーズは、ネジ固定式で壊れにくい。
キャノンのレリーズは、ボディとレリーズの勘合部位壊れてしまったことがありました。しかしニコンではネジ固定式のため、その可能性は低いです。
・ニコンには、ワイヤレスコントローラー(WR-10)がある
キャノンのワイヤレスレリーズは、RC6はボディ正面方向からしか反応しません。
対してニコンのWR-10は、全方位約10m離れていたも、タイムラグ0でシャッターが切れます。しかも複数カメラボディの接続ができます。
・ニコンはバッテリーが安い
ニコンの(D800シリーズ用)バッテリーが4599円に対して、
キャノンの5Dシリーズ用のバッテリーは7459円と約1.6倍も高いです。(17年10月調べ@Amazon)
以上、ユーザーインターフェースについては、ニコンの方にメリットが圧倒的に多かったです。
実際にも、リモートコントローラーのWR-10などは、私にとって必須アイテムになっており、その恩恵は計り知れません。
※メニュー画面などのソフト的な使い勝手は、ボタンを割り当てすることで個人でカスタマイズできるので省略しました。
4:サービス関連:キャノン>ニコン
・キャノンのサービスセンサーの店舗数が多い
キャノンのサービスセンターは、札幌、銀座、新宿、名古屋、大阪、福岡の6店舗があります。対して、ニコンのニコンプラザは、銀座、新宿、名古屋、大阪の4店舗です。(2016年に札幌、福岡が閉店しました)
・写真教室の開校地はニコンのほうが多い
キャノンの写真教室であるEOS学園は、東京、名古屋、大阪の3か所で開催されています。
対して、ニコンのニコンカレッジは、東京(品川)、東京(新宿)、東京(銀座)、大阪(梅田)、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡と9ヶ所で開催されています。
講師の数、開催頻度などもありますので、ニコンカレッジの開催場所が多いからニコンが良いとは言えませんが、地方の方にはメリットになるかもしれません。
・キャノンの経営状態の方が安定している
こちらがキャノンの経営状態です。
続いてニコンの経営状態です。17年の純利益がマイナス71億円の赤字です。
17年の3月には1000名程度のリストラも実施し、今後の経営に対する不安の声が寄せられています。
ニコンのマウントに投資してもどこかで会社自体の経営傾いてしまった場合に、マウント自体がなくなる可能性は低いとしても、競争力のある商品作りができなくなる可能性は十分にあります。
5.絵作り
最後には、絵作りです。これはもう購入者の撮影対象と好みになります。
下の2つの写真は、同じ時間、同じ場所、画角で撮影したものです。上がニコン、下がキャノンです。
どちらも、ピクチャーコントロール(ピクチャースタイル)は風景に相当するモードのJpeg撮って出しです。
2つの絵を拡大して並べてみるとよく分かります。(左がニコン、右がキャノン)
ニコンがコントラストが高くて鮮やかな(かつ高画素)絵作りなのに対して、キャノンはコントラストが低めの淡い絵作りです。
また、ニコンは黒がしまる、とも言われています。
対して、キャノンは、白の諧調を豊かに表現してくれます。
D810 + AF-S Nikkor 70-200mm F/2.8G ED VR II (ISO400,F7.1,SS1/50ec)
このようなことから、一般的にニコンには風景写真が向いていて、キャノンにはポートレートが向いていると言われています。
実際にウエディングフォトグラファーの8割はキャノンユーザーだという話もよく聞きます。
しかし、ニコンでポートレートを撮ったり、キャノンで風景写真を撮ってはダメだというわけでは全くありません。
あなたがどのような写真に心惹かれて、どのような写真を撮りたいか?で決めればよいと思います。
以上でニコンとキャノンの両方のマウントを使ってみての感想をまとめてみました。
この記事がこれから一眼レフを選ぶ方の参考になれば嬉しいです。
※画像出典:キャノン、ニコン、デジカメWatch