今回の記事では久しぶりに機材のネタで書いてみたいと思います。
一眼レフを使い続けている私にとって、ニコン大三元標準レンズであるAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、
4段もの素晴らしい手振れ補正があるのですが、約1kgという重さと単焦点レンズには劣る抜け感には少し疑問を持っていました。
今回の撮影では、これまで愛用してきたニコンの大三元の標準レンズであるAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
こちらのケンコー・トキナー(以下 トキナー)のAT-X 24-70 F2.8 PRO FXを使用してみるに至った経緯と結果を紹介したいと思います。
Tokina レンズ AT-X24-70 F2.8 PRO FX/C
結果としては、単焦点レンズ並みと言ってもまったく過言ではない抜けの良さです。
このブログでは臨場感を少しでも味わってもらおうと、大きな画素数のままで写真をアップしています。
そのため、私はレンズ選びでは、写真を見た人が臨場感を感じられるような、単焦点レンズのような抜け感(透明感や空気感)を重要視してきました。
ニコンの技術の粋を尽くしたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、(それ以外のズームレンズと比較すると)画質は素晴らしく、かつ高画素機には重要な手振れ補正機能がついています。
この手振れ補正の機能は素晴らしく、4段もの効果があり広角側で1/8秒などでもブレずに撮影することが可能でした。
とは言え、ズームレンズであることに変わりはないので、画質の抜け感においては単焦点レンズには今一歩及ばずという画質でした。
検討の当時は9月で、紅葉シーズンもやって来きて登山の機会も増えそうなので、より軽くて画質の良いレンズがないかな?という軽い気持ちで調査を開始しました。
(そんなレンズなんてないだろうと、高を括っていましたが。。)
まずはレンズの評価付けサイトであるDxOmark(https://www.dxomark.com/)にて、ニコンのFマウントの標準ズームレンズをランキングしてみました。
最もスコアが高いのはダントツにシグマの24-35mmというレンズ、2番目にはトキナーのレンズでした。(青枠)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、順位こそ6番目ですが、DxOmark スコア(総合スコア)においては、シグマの24-35以外とは大きな差はないようです。
シグマの24-35mmのレンズは倍率が1.4倍と倍率を犠牲にて、画質を稼いでいるようで、本当に単焦点レンズ並みの画質とのレビューが散見されました。
一方、トキナーのレンズは標準ズーム域ですが、ケンコー・トキナー自体がメジャーでないメーカーのせいか、このような比較記事でもあまり取り上げてもらえず、ユーザーのレビューも少なめでした。
続いて、この3本のレンズのスコアの詳細を比較してみました。
するとTransmissionという評価アイテムがあり、これは私の重要視する抜け感と関係あるのでは?と思い、更に調べてみました。
下のグラフは各焦点距離ごとのTransmissionの値です。単位はT-Stopとなっています。
F-Stopと言えば日本語でF値のことですが、TーStopという単語は聞いたことがありませんでした。
距離ごとに異なる特性値を示しています。(赤がニコン、青がトキナ、黄色がシグマ)
黄色のシグマの24-35mmが圧倒的に低い値を示しているのですが、これはいったい何を表しているのでしょうか?
こちらが、Light Transmissionに関するDxOmarkの説明ページです。
日本語に訳すと、測光された開口値、T値で知られており、光のロス分を補正された実際の開口値、と読めると思います。
また日本語のサイトで、T値について調べてみたところ、キャノンのサイトが分かり易かったので引用します。
つまり、露出にシビアなシネマレンズでは、レンズのスペックではなく、実力値として明るさを把握するため、F値でなくT値という数値が使われているそうです。
車で言い換えると、燃費のカタログスペックと、実際の実燃費といったところでしょうか。
通常レンズには多くの枚数のレンズが使われるため、ニコンの24-70mm VRでは、16群20枚ものレンズが使われています。(出典:ニコン)
またレンズに光が入るとレンズ表面で必ず何%かは反射され、100%の光がレンズを透過することはありません。
そのためセンサーまで届く光は、レンズの枚数が多ければ多いほど少なくなります。つまり、透過率は下がっていくことになります。
※その反射を抑えるために、ナノクリスタルコートなどの反射を抑えるコーティング技術が使われています。
さらに手振れ補正などの機能を追加しようとすると、更にレンズの枚数は多くなり、透過率も更に下がっていくことになります。(かつ重くなります)
逆に言うと、単焦点レンズは構成されるレンズの枚数が少ないため、透過率が高くなることになります。
つまり、透過率の高いレンズ→抜け感の高いレンズと言えると仮定をしました。
そこで、上の絵の数式からこのT値から実際の透過率%が算出してみました。
シグマの24-35mmのT値=2.2、F値=2.0なので、透過率は95.3%になります。
トキナーの24-70mmはT値=2.9、F値=2.8なので、透過率は98.2%になります。
ニコンの24-70mmはT値=3.1、F値=2.8なので、透過率は95.0%になります。
つまり、透過率では、トキナーのレンズはニコンのレンズより、3.2%高いことになります。
それでは、この3.2%の透過率の差がどれほどの抜け感の差を生むを、現物にて比較してみました。
雨が降った後の、電柱を撮影した写真です。(等倍表示)
最初にニコン純正のAF-S Nikkor 24-70mm F/2.8G ED VRです。
こちらが、トキナーのAT-X 24-70 F2.8 PRO FXです。
スライダーで比較してみると、一目瞭然です。(左がトキナー/右がニコン)
F5.6まで絞ってあるにも関わらず、明らかにトキナーのレンズの方が濡れた電柱のコンクリート、黄色のカバーに書かれた落書きのような文字の質感が高く感じまです。
透過率という数値の差分ではたった3.2%ですが、抜け感では大きな違いがあると言えそうです。
手振れ補正こそありませんが、このトキナーのレンズは、そこを割り切って画質を最優先に設計されたレンズのようです。
※参考までに他の標準ズームレンズの透過率を調べてみると、透過率90~95%が一般的のようでした。
またキャノンの大三元ズームであるEF 24-70mm f/2.8L II USMのT値は2.9であり、トキナーのレンズと同じでした。やはり手振れ補正がついていない恩恵だと思われます。
実際にこのトキナーのAT-X 24-70 F2.8 PRO FXを使って、白駒の池のもののけの森を撮影してきましたので、その他の撮影サンプルはこちらを確認ください。
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使ってみた感想は、AFはニコンほどは早くはありませんが、動きものを撮らないのであれば、必要十分な速さだと感じました。
ただし、重要は1010gとニコンより少し軽いだけでかなり重い部類に入ります。
しかし、レンズの長さがニコンほど長くなく、三脚にセットしたときなどの安定感も増しました。
手持ち撮影の際に、シャッター速度にさえ気を使えば問題ありません。
実売価格も6万を切っており、非常に安価なレンズですので、まだまだ一眼レフで頑張る予定の方、初心者の方にはオススメのレンズです。
参考:その他のレビューサイト